会計・監査ジャーナル2009年6月号に興味深い記事があったので紹介します(オリジナルの原稿はAICPA(米国公認会計士協会)の月刊誌に掲載されたもので、それをAICPAの許諾を受けて翻訳されたものです)。

簡単に言うと以下の2点の要因がIFRSの比較可能性(特に国際的な)を阻害する要因があることを指摘しています。

1.文化
会計基準の内容の解釈にあたって各国の会計士や経理担当者(以下、便宜的に「会計士」)の解釈がその国の文化によって異なる。特にIFRSの多くが原則主義であることから国の文化が判断を要する場面で最も影響を与えるものとして懸念の元となっている。
例えば、ドイツの会計士は米国の会計士に比べて、「probable」(可能性が高い)という単語の解釈においてより保守的な傾向を示している。
米国とギリシャの会計士では偶発事象の認識と開示について異なる決定をすることが分かっている。ギリシャの会計士は米国の会計士と比べて開示の観点から訴訟の存在を他社に明らかにしたがらなかった。
調査結果から分かることは、IFRSの会社にあたり国の文化が重要な役割を果たし、異なる判断が財務諸表上の重要な差異につながる可能性がある問題としている。


2.翻訳
英語を各国語に翻訳する際に本来の意味とは異なるニュアンスに翻訳される可能性がある。
例えば、発生可能性の表現(probable,not likely,reasonable assurance)について英語表現の解釈とフランス語翻訳の解釈では大きな違いがあることが明らかになっている。特に問題となるのは「remote」(ほとんど可能性がない)で、IAS37「引当金、偶発負債及び偶発資産」及びIAS31「ジョイントベンチャーに対する持分」で偶発負債を開示する境界線を設定するために使用されている単語である。2つの基準で「remote」が使われている文脈からはいずれも同じ意味を伝えることを意図していると考えられるが、フランス語訳ではIAS31の方がより強い規定を置いていると解釈されるような翻訳となっている。
ドイツ語訳ではそれ以上に問題があり、2つの基準の翻訳が異なっている。

という感じで文化と翻訳についての調査結果を述べた後に、結論として社会の価値観の仕組みは非常にゆっくりとしか変化しないため、多国籍業やグローバルな監査事務所がそれぞれの文化に対する認識をたけめる研修を強化することが重要になるだろうとしています。
また、「remote」を例えば「10%以下」という単語に置き換えれば言語上の不明瞭さをなくすことができるが、IFRSの背後にある哲学とは相容れないのでIASBの関係者には受け入れられないだろうとも述べています。

IFRSの日本語訳を読んだ方は分かると思いますが、所々で非常に読みにくいフレーズが出てくる一つの理由として、本来の意味を伝える意図がある翻訳だということですね。といっても、読みにくい→理解できない、では本末転倒ですが、、、。
個人的にはIFRSの適用の影響は、実は一部の会社(一部といってもほんの僅かという意味ではないです)や業界を除いて、巷で騒がれているほど大きくはないのでは?と思っていたりしますが、このあたりは次回以降にでも。